★第1話
「自分の家に下宿する男」 
大場十一は、写真の専門学校を卒業、山岳写真家・稲葉勇作のアシスタントになり、プロ・カメラマ
ンめざして修業中の身。外交官になるのを嫌ったため、外交官である父の鉄也に勘当され、目下、せ
まいアパートに1人暮らし。 ところがある日、父・鉄也が、東アフリカのケニンゴ国公使に任命さ
れ、十−に何の相談もなく、広い邸を知人の栗山信に譲り渡してしまつたことから、十−の生活は一
変した。 日本に残していく十−の身を案じた母・邦子は、夫に内緒で、十一を同居させてもらうよ
う栗山に依頼したのである。さいわい栗山は快く承知してくれ、十−も、母の願いを聞くことにし
た。 かくて、栗山家と十−の奇妙な生活がはじまった。栗山信は、ある繊維会社の部長で、妻の死
後、五人の娘たちを男手ひとつで育てあげてきた。長女・春子は、看護婦で寮住い、次女の夏代は、
家事いっさいをとりしきるしっかり者、三女の秋枝は、宝石のセールスをしている。四女の冬子は短
大生、末っ子の阿万里は、まだ小学生だった。彼女たちは、年ごろの娘が多い中に得体の知れない男
を入れるのは危険だ、と十−の同居に大反対。今夜は、十一が栗山家に入るまでのいきさつを、てん
やわんやの騒ぎの中に描く。