★第17回
「母性本能刺激作職」
 雪山から帰って来たばかりの勇作に、うれしい便りが舞い込んだ。カラコラム氷河調査団の事務局
からで、記録写真担当として同行してほしいという。世界の雄大な自然をカメラにおさめたいとつね
づね願っていた勇作は大喜び。 しかし、それが六カ月にも及ぶ調査と知って、夏代のことが気がか
りになった。日本を離れている間に夏代を他の男性にとられるのではないかと、不安になったのであ
る。出発前に何とか夏代の心をつかんでおかなければならない。 そこで、勇作は十一に相談、一芝
居うった。足にギプスをはめ、山で骨折したふりをしてみせたのだ。夏代の同情を買い、くどいてし
まう魂胆である。そんなこととも知らず、夏代はいたれりつくせりの看病、勇作は一人有頂天になっ
た。 ところが、勇作がピンピンしているのを秀子がたまたま目撃、十一の口封じ作戦もむなしく、
夏代に仮病をばらしてしまったから大変‥…。