★第20国
「もてないね?」
 二女の夏代に縁談が持ちあがった。相手は信の上役の知り合いで高木洋介といい、家柄、学歴とも
に申し分ないハンサムな青年実業家である。 夏代は十一のことが気になるが、思いきつて見合いを
することにした。それを知った十一は、仕事も手につかないほどの動揺ぶり。 一方、三女の秋枝
は、夏代を心配して、ひそかに興信所に頼み、高木の身上調査をした。それによると高木は、酒もタ
パコもやらず、女性とのウワサもないまじめ人間。秋枝はかえって不安にかられ、高木に直接会いに
いったが、そのことが大変な事態を招いた。 高木は、なんと秋枝に一目ぼれしてしまったのであ
る。夏代をさしおいて、高木と交際するわけにもいかず、秋枝は困りはてた‥‥‥。